在宅フリーランス女性『るきさん』の働き方・暮らし(一部ネタバレ)
田舎暮らしをしている専業ハンドメイド作家の白井です。
今回は、私の愛読書『るきさん』をご紹介します。漫画といえど、逞しくのびやかに人生を謳歌したい方のバイブルともいえるので、ぜひちょっと覗いてみてください。
高野文子さんによる漫画作品はいくつか持っているのですが、漫画と小説の間にあるような、不思議な空気感があって大好きです。
るきさんの画はどことなくサザエさんやポパイを思い起こさせるような、ひょうひょうとしたタッチで描かれていて(しかもオールカラー!)、普段漫画を読まない私にも抵抗がありません。
雑誌『Hanako』で’88年から’92年まで連載された漫画で、バブル期を背景に描かれていますが、るきさんは地に足のついた、現代的な逞しさのある女性で、年齢は三十代半ばらしいのです。
在宅フリーランスの羨ましい暮らしぶり
るきさんは、在宅でお医者の保険の請求をするお仕事をしているフリーランス。一ヶ月分のお仕事は一週間で終えてしまって、あとは図書館に通って焼きそばパンとコーヒーを頼んでお昼寝したり、趣味で切手を集めたりしています。
大きな事件や人生を揺るがすドラマなんかはありません。
あるときは図書館で子供と本を取り合ったり、あるときは湯船に浸かりながらコーヒーを飲み、お風呂で丸一日生活してみたらどうだろう、、、と妄想を楽しんだりします。
親友のえっちゃんは、るきさんとはちょっと性格が違います。
デザイナーズらしきマンションに住んでいるバリバリの会社員。無添加食品を好み、着ないブランド服をため込むタイプ。
二人はお互いの部屋を行き来しながらも、絶妙な距離感を保っています。
ここで私の好きな回を2つご紹介しましょう。ちょっとだけ人生を考えさせられます。
お煎餅のエピソード
ひとつは、お煎餅のエピソード。
るきさんがお煎餅をくわえたまま爽快に自転車をこいでいたら、お煎餅が口から離れて、民家の庭の木に引っかかってしまいます。
一口しか食べてなかったのに。と思いながらその場をあとにするわけですが、その夜、るきさんはなんとなくお煎餅のことを思い出しています。
今頃、夜露にぬれてるかな。。。
私ならうちまで歩いて10分だけど、お煎餅からしてみたら相当な距離だな。。。と。
慌ただしい生活を送っていたら、こんなふうに一つのお煎餅に思い巡らせることってなかなかありません。
もしお煎餅が、るきさんの後を追ってうちまで戻ってこられたら。
そんなことを考えている時間ってなんと創造的なんだろう。そこからひとつ物語が生まれそうな予感もします。
スキップのエピソード
それからもう一つのお気に入りは、るきさんのスキップのエピソード。
春だから気持ちが良くて、るきさんがスキップしています。
隣で恥ずかしがる親友のえっちゃんに向けて、「なんで恥ずかしがる必要があるの?お天気のいい日にスキップしてなにがいけないの?」と、るきさんが言います。
そういえば、大人になってからスキップしなくなったなぁ、と思いませんか?
大人だって楽しいときは堂々とスキップしたらいいんです。楽しい気持ちをもっと表現してみたらいいんです。考えてみたら、大人になってやらなくなってしまったことがたくさんある気がしますね。
るきさんの視点で日常を覗いてみると、毎日がもっと軽やかに楽しく、愛おしく見えてくるかもしれません。
ちなみに、るきさんの最後はなんと、趣味で集めていた切手を売り飛ばしてさっさとイタリアのナポリに移り住みます。
ナポリから送られてきた写真には、日本と変わらないごく普通の部屋に炊飯器と焼き魚。
その横にはきちんと正座して、いつも通りごはんを楽しむるきさんが写っていました。
世界中どこにいても、るきさんはるきさんなのでした。
作家も、もっと自由でいいんだ、と思い出させてくれる、バイブル本のご紹介でした。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません