ハンドメイド作品の値上げのタイミングと方法【いつ、いくら値上げすればいい?】

2023年1月30日

先日『将来を見据えた値上げを考えているのだけど、どのタイミングでどのくらい値上げしたらいいんだろう?』と同業のハンドメイド作家さんから質問されました。

その作家さんはまだ今までに値上げした経験がないそうで、しかも材料費の高騰などの伝えやすい理由ではないので、だいぶ悩んでいるようでした。

はじめから作家業が本業になると確信して作家をスタートするひとは少ないかもしれません。やりながら、なんとなく希望が見えてきた気がして、恐る恐る値上げに踏み切る場合が多いのではないでしょうか。

私も昔ずいぶん悩みましたし、怖がりながらも試行錯誤を重ねてなんとかやってきたので、私の経験談が少しでも役立つかもしれません。
今回は、そんな私の値上げ経験についてお話してみたいと思います。

 

ハンドメイド作品はいつ、いくら値上げすればいいか?

 

いつ、どのくらい値上げすればいいか?皆さんが最初に悩まれるところかと思いますが、

結論から言いますと、私は『一度にご注文いただける合計金額』を目安にしていました。

例えば、一つ千円の作品を販売していたとします。
初期の頃は、一つずつご購入されるお客様が多い傾向がありますから、お一人の一回分のお買い物の合計金額はほとんどが千円の場合が多いかと思います。

でもそのうち、常連さんがまとめ買いしてくれるようになってきます。
『○個以上買ってくれる人がかなり増えたな。。』という状況になったとき、そのときが値上げを検討するタイミングだと思っています。

そのとき注目するべきポイントは、一人のお客様の一回分のお買い物の合計金額。
3千円以上ご購入される方が多いなら、『千円→3千円に値上げ可能』ということになります。

 

なぜ合計金額から値上げのタイミングと値上げ幅がわかるのか?

これは、心理的な問題だと思います。

例えば日常的なお買い物をするとき、半分無意識のところで「このお店で〇〇円までなら使ってもいいな」というラインがあったりしませんか?

「このくらいの金額ならOK」という設定が一人一人にあり、それはお店によって変わります。
「近所のディスカウントストアで日用品を買うのなら数千円までだな」
「免税店でブランド財布を買うのなら5万円前後かな」
というふうに。

一回のご注文の合計金額が増えたということは、それだけそのお店への信頼度、購買意欲が上がったことの目印。

そして「そのお店で使える金額=作品一つに設定できる最大の金額」でもあります。

いつも五千円までしか使わないお店で急に一万円の商品を買うのは結構勇気がいりますが、五千円であればぎりぎりOKの範囲なので、引き続き購入してもらえる可能性が高いというわけです。

 

値上げ前後の流れ【やること・注意点・コツ】

といっても、大幅な値上げをすれば一時的に売り上げが落ちるのは当たり前。それまでのお客様との関係が壊れてしまうのでは?本当にうまくいくのか?など考えると、ドキドキしますよね。

ここで、私が実際に値上げに踏み切った状況と、どのようにお客様にお知らせをし、どのような過程で売上げが回復していったか、というおおまかな経過をご紹介します。

 

①値上げを検討する

私が作品を一つ3000円台で販売していた頃、常連のお客様が一気に増えだして、一度に3個以上ご購入いただけることが増えました。

作ることが追い付かなくなるほどではありませんが、制作して発送するまでの過程は長く大変です。
まとめ注文が入るほど負担になっていきました。

そこで値上げを考えました。
実はそれ以前にも値上げをしたことはありましたが、その頃は自分なりの目安が何もなく、とにかく怖かったので、ほんのちょっとだけ、数百円程度の遠慮がちな値上げでした。

(そのときの値上げは、特にお客様の入れ替わりもありませんでしたし、売上も大して変わらない、やってもやらなくてもいいような値上げだったな、、いう感想です。)

 

②値上げの一番の理由は、作家を本業にしたかったということ

「今度値上げするときは、ハンドメイド作家として生活することを視野に入れた値段にしよう」と思っていました。

そこで生活や制作に最低限必要なすべての金額を出して、1ヶ月に作ることができる作品数で割ってみたのですが、その頃の値段からしたら「とんでもない!」と感じるような仰天の高値。これにはショックを受けました。笑
「そうか、この作品を今のような価格で販売していても作家として生活できないのか。。」ということが理解できたわけです。

③ご注文の合計金額を目安にすると踏み出しやすい

そんな中、自分の中で渋々、妥協案としてひねり出したのがお客様のお買い物の合計金額を目安にするということでした。

自分の生活費を目安にするのは後ろめたい気分もありました。
本当にそんな理由で値上げしていいのだろうか?という不安と疑問で訳が分からなくなりました。笑

でも、生活のために収入を得る、必要な儲けから逆算して販売価格を決めることってよく考えてみれば、みんながそうしているごく常識的なことですよね。その頃はまだ自営業者としての認識がなかったので、とにかく何から何まで不安だったのです。

勇気のでない値上げ初心者の私にとって、この方法であればお客様の目線で金額を設定していることになるので、なんとなく踏み出しやすかったということもあります。

 

④値上げのお知らせ

そうして、いよいよ値上げのお知らせを出すことにしました。

将来の作品づくりとブランドづくりのために、長い間考えて考えて結果を出しました。と長い説明を書きました。

大切なことは、値上げの理由とどの程度値上げするのかをできる限り詳細に説明して、お客様から理解していただくこと。
値上げは多くのお客様にとってグッドニュースではないかもしれませんが、そんな中でもできる限り安心、信頼していただけるように心掛けます。

 

⑤お知らせ直後はご注文ラッシュ

値上げのお知らせをしてから、実際に値上げするまでの期間は、ご注文がどっと増えました。

「しばらく見ていただけだったけど、値上げ前に一度買っておこう」というお客様や、「常連さんだった方々の最後のまとめ買い」というケースもありました。

可能なら、お知らせ前に在庫の確保をしておくと心に余裕が持てます。
ご注文に対応できないと思ったら、一定期間は販売をお休みにしてもいいかもしれません。

 

⑥値上げ直後はいったんご注文が途絶える

値上げ直前のラッシュが嘘のよう。直後には、ぱったりとご注文が途絶えます。

数ヶ月の間は、値上げ後に初めてブランドを知ったお客様の控えめなご注文を時々いただくくらい。
それがとてもありがたかったのを覚えています。

値上げ前を知らないお客様にとっては、それが当たり前の値段で、その上でご購入頂いたんだ、ということを考えると、かなり勇気づけられました。

 

⑦数ヶ月後、収入は徐々に回復。

そうして数ヶ月経って気づくと、収入は元通りに戻っていました。 

販売個数は以前より少なく時間に余裕があるのですが、以前以上の収入を保っているという状況でした。
やっぱり合計金額を目安にした設定は外れてなかったな、とホッとひと安心。

⑧客層が変わる

そして同時に、お客様の顔ぶれは、ガラリと入れ替わりました。

元々の常連さんで残っていたのは、よくまとめ買いしてくださっていた中でも一部のお客様。他のお客様はほとんど残っていませんでした。

そのかわり、新しいお客様が常連になってくれました。

以前はプチプラでかわいいもの好きのお客様が多かった状況から、こだわり派で、気に入ったらとことんファンになってくれるお客様が多い状況に変わり、お客様が作品を見る目が変わったということも感じました。

私は過去に何度か大きな値上げをしたことがありますが、そのたびに客層が変わります。千円の商品なら、どんなに素晴らしい商品でも千円の価値だと受け止められがちですし、同じ商品でも一万円の値段がつくと、一万円の価値があるものと認識してもらえるようになります。どんなものでも、とは言いませんけどね。

値段は商品の価値をお客様にわかりやすく提示する役割も持っているものだと思います。

 
値上げの考え方と注意点

値上げ前後にするべきこと、起こることがなんとなくわかっていただけたのではないでしょうか。

ここからは、実際に値上げをご検討されている方向けに、大切なところをもう少し掘り下げておきたいと思います。 

 

一気に値上げするのは怖い?

千円の作品を一気に3千円、一万円に値上げするのは結構勇気がいるかもしれません。

もちろん、ご自分のタイミングで何回かに分けて少しずつ値上げを繰り返してもいいと思います。

ですが、少しずつ少しずつ値上げすると、あまりにも時間がかかってしまうのが難点です。

値上げばかり頻繁に繰り返しているとお客様が定着する前にまた値上げ、ということになりかねず、収入の安定が遅くなってしまうので、あまりおすすめしません。

目指す価格まで〇回に分けて一年ごとに値上げしよう、などと計画しておいてもよいかもしれません。

 

お客様からの反応が気になる?

値上げ幅にもよりますが、大幅な値上げのお知らせをした直後は、レビューなどで「値上げが残念ですが、」などのコメントをちらりと頂いたことも。

でもそれは、お客様の当然の反応だと思います。
ご理解頂けるように十分にご説明した後は、その気持ちを素直に受け止めます。

でもお客様も、悪気があって書いているわけではありませんし、残念とレビューしたお客様が値上げ後もご注文をくださったりします。

ですので、あまり神経質になることはありません。淡々と今まで通り、日々の制作を続けましょう。

お知らせするときに気をつけることは?

一番気をつけておきたいのは、信頼を失わないように心掛けることです。

根拠もなく気安く値上げしているように見えてしまえば、そういう信頼のないブランドなのだなという印象を与えてしまい、マイナスしかありません。

せっかく残ってくださる可能性のあったお客様を失望させてしまうことにもなります。

信頼というと堅苦しいですが、簡単にいうと、安心してもらえる存在であることが、いつも安心してお買い物頂くために、とても重要なことです。

その気持ちだけは忘れないようにして、値上げの期間をぜひ乗り越えていきましょう!

値上げして良かったことは?

▶時間に余裕がもてる

小刻みな値上げでは実感しづらいことですが、大幅な値上げの後は、時間に余裕がでてきます。

値上げ前の同じ収入だった頃と比べると、その差は歴然です。

発送、梱包の回数が少なくなり、お取引するお客様の人数も絞られるため、ゆったり制作に取り組め、お客様一人一人と丁寧にやりとりできるようになります。

 

▶作品を丁寧に扱ってもらえる

低価格で販売していると、作品を粗く扱うお客様がどうしても多いと感じます。
お客様は、「値段なりの作品」と見ているからです。

同じ作品でも値段を上げるだけで見え方が変わるもの。
お客様は高級なものを扱うように、丁寧に扱ってくださるようになります。

また、お誕生日や記念日などの特別な日にご注文くださる方が増え、特別な想いを込めて作品を見てくださる方が多くなりました。

 

値上げして悪かったことは?

今までに何度か値上げをしてきましたが、正直に言うと直後だけは後悔したこともありました。

ご注文が途絶え、やっぱり元に戻そうか、などと考えてしまうこともありましたが、今思えば気が短かったなと思います。

何ヶ月か経ってみると、必ず毎回、値上げ前の収入を超えているのです。
収入以外の面でも良いことばかり。おかげで作家がお仕事になりましたしね。
悪かったことは一つもありませんでした。

【まとめ】ハンドメイド作家の正しい値上げの方法とは?

 

今回の記事で書いた値上げの方法は、あくまで私の経験上、試行錯誤してきた中で見つけた私なりの法則です。

ハンドメイド作家の値上げの仕方に、これが正解といえる方法論などはありません。

ただ、ひとりの覚悟で決定して、値上げを実行するって、あまりにも不安なものです。
それまで買って頂いていたお客様がどんどん離れていってしまって、誰も残らなかったらどうしよう、後ろ指さされるかもしれない、なんて悪いことしか考えられなくなってしまったことが、私にもありました。
だから、その怖さはわかります。

でも、これからの作家生活を前向きに考えたときに値上げが必要だと感じているのなら、その階段を一歩ずつ上がっていくしかありません。

私の場合、怖いながらも「このやり方ならなんとかいけるかも」と思える方法を見つけながら進みました。

私がここに書いた方法で、「これならなんとかいけるかも」と思えた方は、ぜひ試してみてください。

将来のための前向きな値上げなら、きっと成功しますよ!

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