委託販売先の決め方・選び方【ハンドメイド作家の心得】
こんにちは。
専業で活動しているハンドメイド作家の白井です。
作家歴も約10年と長くなり、イベント出店経験は数えきれず。今までに数十の委託店ともお取引してきました。
現在では自ら販売するようなイベント出店はほとんどやらなくなりましたが(前回の記事参照)、今でも委託販売・POP UPなどのお誘いを頻繁にいただきます。
その中で、いつも悩んでいたことがあります。
それは、『委託店をどのような基準で選ぶべきか?』ということ。
どのお誘いをお受けすれば、自分にとっても相手にとっても幸せな良い結果になるだろう?
と、お誘いメールをいただくたびに頭を悩ませていました。
そして長年の経験から、たどり着いた答えがあります。
この選び方を心得ておけば、相性の良い委託店を選ぶ視点が定まり、委託店とのよい関係を築きやすくなります。
初心者作家さんにも大変役立つと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
《3ステップ》委託店からのお誘い【対応と決め方】
委託店からお誘いを頂いたときに、どのような基準で選ぶか?
簡単に言うと、興味を持ったら詳しい話を聞く→迷ったらメールの熱量、具体性で決めます。
以下で具体的にご説明しましょう。
【ステップ1】 先方様情報をチェック
委託販売やPOP UPなどのお誘いは、SNSのDMや、メールを通していただく場合が多いかと思います。
はじめて頂くメールの文面は、たいてい定型文にお店のホームページやSNSを貼り付けてあるだけで、あまり具体的な内容ではありません。
ここではまず、先方様がどこにあるどのようなお店(or ギャラリー)なのかをチェック。
自分の作品やブランドイメージに合っているか、好みか好みではないかを確認しましょう。
開店したばかりの新しいお店よりは、できればすでに既存のお客様がたくさんいて、地元に長年愛されているお店、経営がしっかりしているお店がおすすめです。
【ステップ2】 興味を持ったら詳しい取引内容を教えてもらう
そのお店(or ギャラリー)に興味を持てなければ、その時点でお断りして良いですし、興味を持ったら『ぜひ詳しい内容をお送りいただけたら幸いです』と返信を送ります。
販売手数料や振込手数料、配送費用の負担など、その他様々なお取引条件について、細かく教えてもらいましょう。
作家側から一つ一つ質問しないとお答えいただけないようなお取引先では、後々困ったことになりがちです。
この時点で、しっかり責任を持った、スムーズなお取引ができる委託先かどうかを確認することも大切です。
【ステップ3】 迷ったら、メールの熱量と具体性をチェック!
お取引内容に納得し、先方様のお答えもスムーズで問題なさそう。
そんなとき、こんなことが頭に浮かびます。
『でも以前、委託販売で失敗したことがあったしなぁ。他にも似たようなお誘いをもらっているけど、全部のお店に委託することはできないし。』
つまり、決め手に欠けるのです。
同じ条件で、いくつも選択肢があったとき、どれを選べばよいか?
こんなときには、作品やブランドに対する文面の熱量と具体性で選ぶのです。
文面の熱量とは、メールから伝わってくるあなたの作品や作家に対する熱意や大切に想う気持ちです。
そのようなお取引先のメールからは、『お店にとって都合のよい作家、作品ならどれでもいいわけではない、あなたの作品だから取り扱いたい』という気持ちが感じられます。
また、定型文を貼り付けただけの文章とは明らかに異なる、ブランドや作品についての感想、想いが具体的な文章表現で書かれていれば、ブランドへの関心が高いとわかります。
・作品に高い関心を持ってくれているか。
・作家の立場になって考えてくれているか。
・作家やブランドを尊重してくれているか。
・やりとりの中に安心感と責任感が感じられるか。
という点をしっかり感じ取ることができれば、その先方様はとても素敵なお取引先だと思います。
【甘い誘い文句に要注意!】
誘って頂いているわけですから、ある程度気に入ってもらっているか、先方の基準を満たしてはいることは確かなのでしょう。ですが、定型文の甘いお誘いには少々注意が必要です。
お誘いメールは、必ずと言っていいほど定型文が使われています。
よく見れば、たいていの作家さんに当てはまりそうな褒め言葉だとわかるのですが、恥ずかしくなってしまうほどの甘い褒め言葉が並んだお誘いメール。でも取引条件を聞いてみると、作家にとって厳しい条件を提示されるということが時々あります。
作家にとって、作品やブランドの世界観を誉められることはとても嬉しいことです。
でも交渉してみると、実際には個々の作家、作品に対してそれほど高い関心はなく、少しでも自分に都合の良いお取引をして少しでも儲けを出すことばかりを優先している、そのように感じることは少なくありません。
もちろん、どの委託先もお店の儲けを出さなければならず、そのための営業であることは理解できます。
けれど、作家と委託店は対等ですし、win-winの関係でなければ、お取引そのものが成功するはずもありません。
甘い言葉に「作品の魅力をわかってくれたのかも!」と誘われて、厳しい条件をつい呑んでしまうことがないよう、どうぞ注意してください。
熱意のある委託先なら作品の管理も安心。しかもよく売れる
私がなぜメールの文面の熱量や具体性でお取引先を決めるようになったかというと、
◉文面の熱量=お取引への熱意
◉具体性=ブランドや作品への関心の高さ
だと感じるからです。
せっかく委託するなら、作品やブランドに惚れ込んでいる人にお任せしたいですよね。
できればブランドの世界観や作品のファンであってほしいですし、ブランドや作品に対して強い想いを持っていて、その上で責任を持って、素敵なお客様へ届けてほしいのです。
それに実際、そのようなお取引先に出逢うと、お取引する上でたくさんの嬉しいことがあります。
【熱意のある委託先とお取引するメリット】
◎作品の管理がしっかりしている
◎素敵にディスプレイしてもらえる
◎お客様の反応なども細かく教えてもらえる
◎心の込もった細やかな対応をしてもらえる
◎強い信頼関係ができる
◎長いお付き合いができる
◎成長できる
◎よく売れる
このように、熱意のある委託先であれば、作品の取り扱いに関してもとても慎重ですし、お客様に作品の良さをしっかり伝えてもらえ、その結果、ご購入に至る頻度も上がります。
つまり、いいことだらけ。
初心者作家でも良い委託店を見つける方法
自分から委託先を探す場合も、しっかりとした委託店と出逢い、良い関係性をつくっていくことが大切です。
私が初心者作家だった頃は、当たり前ですが、今のようにお誘いをいただくことはありませんでした。
その代わり、自分から委託してもらいたいお店を探して、メールを送っていました。
そのときのメールは、もちろん定型文で良いのです。
自分の作品やブランドコンセプトなどを伝え、委託していただけませんか?と訊ねるだけ。
自分からメールするので、お取引条件が悪くても嫌とは言いにくいという面があるかもしれませんが、そういうときはこんなふうに対処します。
【ステップ1】メールを送る
委託依頼のメールは、定型文を作っておくと便利です。
『私は○○というブランドで○○を制作販売しております、○○と申します。
先日○○様のホームページを拝見したのですが、とても素敵なお店でしたので、ぜひお取引させて頂けたらと思い、ご連絡させていただきました。もしよろしければ、私の作品をお取り扱いいただけないでしょうか?ご連絡を心よりお待ちしております。』
このような文面に、作品画像を添付したり、SNSやオンラインショップのURLを貼り付けます。
アレンジして使ってくださいね。
【ステップ2】取引条件を聞く
「委託可能です」と快いご返事を頂いたら、次に取引条件を聞きます。
この時点で、あなたの作品に少しでも興味を示してもらっているかどうかも大切です。
作品への感想が薄いようなら、今後のお取引はあまり期待できないかも、と判断します。
また条件が希望より悪い場合、できれば少し交渉してみましょう。
『大変恐縮なのですが、原価の関係で、少しご相談させていただけたら幸いです。例えば、○○掛けですといかがでしょうか?』
と、なるべく丁寧に。やわらかく。
条件が希望とかけ離れていたり、作品への興味もあまり感じられないようなら、お取引は難しいと考えます。
少し言いにくいかもしれませんが、もちろんお断りしてOKです。
もし好感触に感じられたら、委託をお願いしましょう。
【ステップ3】良い委託先か見極める
委託を始めたからといって、必ず長く続けなければいけないわけではありません。
しばらくしてから気付くことも多いものです。
はじめの数ヶ月から半年くらいで、その委託先が良い委託先かどうか見極め、マイナス面が多いならその時点で早々にお取引を終了させてもらうことをおすすめします。
以下の点をチェックしましょう。
◎避けるべき委託店
・あなたの作品への興味が薄い
・作品の扱いが雑
・売上報告が不定期あるいは雑
・売れない
・メールの返信が遅い
・ホームページやSNSの更新頻度が少ない
◎その委託店は大丈夫?確認方法
避けるべき委託店に委託すると、納品した作品がずっと売れ残り、その間に包装が劣化したり汚れたり、ホコリをかぶっていたりします。
売れないはずです。
売れないばかりか、そのまま放置していては、ブランドの価値を下げるだけ。
お店が近場にあるなら、直接行って確かめるのが早いですが、遠方ならお店の方に陳列したところの写真を見せてもらうのも手です。
『参考にしたいので』と写真を撮ってもらえるようお願いするとよいでしょう。
もしくは送料はかかりますが、一度返送してもらうのも良いと思います。作品の管理状況がはっきりわかります。
【ステップ4】委託店は定期的に見直す
委託先は、定期的に見直すのがおすすめです。
新たな委託店に出逢いたいと思ったら、気になるお店を探して委託依頼のメールを送りましょう。
委託作家を募集しているお店かどうかは関係ありません。
純粋に、自分の作品を置いてもらいたいお店にメールしましょう。
あなたの作品を心から気に入ってくれる相性の良いお店と出逢えるかもしれません。
委託店は数より質《委託店にまつわる失敗談》
私がまだ初心者の頃、焦ってお取引先を増やそうとしていたことがありました。
“お取引先が増えれば、単純にたくさんのお客様の目にとまり、多くの方にブランドを知ってもらうことができるはず”
そう考えて、とりあえず委託させてもらえるお店を増やしたのです。
ですが、『お店の数だけ納品するため時間はかかりコストはかさむのに、納品後は音沙汰なし。』という状況に陥りました。
結局、後にお店が閉店したり、こちらから返送をお願いしたりして、大量の在庫が返ってきたわけですが、作品は既に劣化しており、中には破損しているものもありました。
そうなると、もう商品にはなりませんので、泣く泣く廃棄するしかありません。
このようなことがあって、私は委託店をしっかり選び、一つか二つに絞るようになりました。
委託店は増やすほどに作品の管理や在庫状況の把握、メールのやりとりなど雑務が増えるので、委託店を増やすことはリスクになりやすいのだと思います。
管理のよくないお店なら、なおさら。
ということで、委託店は、相性の良いお店を厳選することを強くお勧めします。
良い委託店とは?
良い委託店は、よく売れるお店であることが多いですが、よく売ってくれるから良い委託店かというと、そういうわけではありません。
最初はよく売れているように見えても、作品の管理のためか、お店のお客様層が変化したためか、時間が経過すると売れなくなるお店などもあります。
良い委託店は、たとえ売れるまでに時間がかかっても、作家や作品を大切に考え、素敵なお客様と作家の良いご縁をつなげてくれます。
そういうお取引先とお付き合いすることで、作家としてのプロ意識がより健全にあたたかく育まれ、成長させていただけるような気がします。
《まとめ》自分に合った委託店を見つけよう
今回は『委託販売するお取引先の決め方・選び方』について書きましたが、いかがでしたか?
今はまだ委託店からお誘いを頂いていなくても、気長に大切にものづくりを続けていれば、そのうちきっと良いお誘いをいただくことがあります。
色々な委託店がありますので、委託店で悩まされることもあれば、委託店に育ててもらうことも多々あるわけですが、自分に合った素敵な委託店との出逢いをぜひ見つけてください。
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