【本業を目指すなら原価の3倍は間違い】ハンドメイド作家の値段の決め方

2023年1月30日

ハンドメイド作家を10年近くやっている白井です。
現在は本業作家となり、田舎暮らしをしています。
今回は、10年の経験の中で行き着いた『値段の決め方』について書きたいと思います。

ハンドメイド作家を仕事にするなら、原価の3倍は間違い

巷では「ハンドメイド作品の適正価格は原価の3倍」なんて言われています。

『原価には材料費+作業時間(時給)+梱包代+送料+通信料+手数料などが含まれていて、×3をすると、適正価格が算出できます。』という話なのです。

私も、初心者作家の頃はこれにならって価格設定していました。

でも、あるとき気づいたのです。

適正価格ってハンドメイド作家一人ひとり違うんじゃない?ということに。

この計算には、差し当たってハンドメイド作品をつくり販売するための経費は含まれていても、ハンドメイド作家、ハンドメイドブランドとしてより成長し、将来的に長く継続、発展していくための要素が何も含まれていません。

一生懸命育ててきたブランドとしての価値、作家として長年切磋琢磨してきた技術や経験の厚み、新作を開発したり、将来的にブランドとして拡大、成長していくための蓄えになるものなど、大切なことが全然考慮されていないのです。

例えば、
「作品のクオリティを上げるために高価な機械を購入したい」
「新作をつくるために一ヶ月窯元に修行に出たい」

なんて思っても、目の前のことだけで精一杯で、作品はよく売れている割に、そんな余裕どこにもありません。

『趣味で短期間ハンドメイド販売を楽しみたい』という方には、『原価の3倍』がちょうどいい場合もあるかもしれません。

でも、ハンドメイド作家をきとんと仕事にしたい、将来も長くハンドメイド作家を続けていきたいのなら、この価格設定から離れて考えるべきでしょう。

ハンドメイド作品の適正価格の付け方は一人一人異なる

『原価の3倍』が間違いなのだとしたら、適正価格はどうやって出すの?と思いますよね。

私は、誰にでも当てはまる適正価格というものは存在しないと考えています。

ハンドメイド作家は一人一人まったく異なる作品を、まったく異なる考えと条件と工程で生み出しているので、そもそも初期設定があまりにも違いすぎるのです。

ハンドメイド作家として今いるステージやブランディングが異なれば、適正価格の計算方法も異なるはずです。

【本業ハンドメイド作家の値段の付け方】適正価格の計算方法

では、実際にはどのように価格設定したらよいのかというと、私の場合はこのような方法で考えています。

『ハンドメイド作品の販売で得たい月収』−『一ヶ月で無理なく作れる作品数』

例えば、ハンドメイドで月収10万円希望で月に作品を10個作れるなら、作品一点一万円。
月収6万円希望で月に60個作れるなら、作品一点千円。
というふうに計算します。

その価格設定は適正ですか?

上の計算はあくまで私の経験から編み出した方法なので、あなたが計算した結果が適正かをチェックしてみましょう。

①余裕をもつ

この計算は、作った分は完売する前提になっています。

作ったものが完売することってそう多くありません。
中には途中で失敗して売り物にならないものも出てきたりします。
その分も含めて考えると、希望の収入か作る作品数に最低でも1割から2割程度の余裕を持っておきましょう

例えば、
『月収20万円必要で、月に10個しか作れない』なら、

『月収22万円必要で、月に10個しか作れない』
『月収20万円必要で、月に8個しか作れない』

などとしておきます。

②原価×4以上は必ず維持する

作品によって、利益率の高いもの、低いものがありますが、利益率が低いものでも、原価×4以上の価格を維持するようにします。

「手間や時間が全くかからないのであれば、多少利益率が低くてもサービスしたい…」と思うこともあるのですが、利益率が低くてもやっていけるのは、薄利多売が可能な場合だけ。

個人でやっているハンドメイド作家が同じように真似してしまうと、結果的に首を絞めることになるので、極力避けましょう。

どうしてもやりたいと思うときは、期間限定の商品など、特別なときだけに絞ったほうがよいかと思います。

(ここで原価×4以上としたのも、あくまで私の目安。それぞれの作家さんにとって違和感や無理のない数字に設定してください。ただし、低くするのはおすすめしません。)

③その価格で販売するイメージをしてみる

月収20万円必要で、月に10個しか作れないなら、1点2万円で販売するしかありません。

例えば、今あなたが作っているのがぬいぐるみだとします。
ぬいぐるみを1点2万円で売らなければならないので、2万円の価値を与えるのです。

素材やデザインにこだわって一点物にするとか、ストーリーやコンセプトを付けるなど、その作家さんならではの方法で、他にはない特徴を付けます。

どうしてもそのぬいぐるみに2万円の価値が与えられないのなら、今作っているぬいぐるみで月収20万円を目指すのは難しいかもしれません。

いったんぬいぐるみから離れて、他の作品を検討してみるのもよいでしょう。

◎ちなみに、スマホケースなどは制作時間が短く原価が抑えられますが、価格帯は5千円以上も一般的。そのため、利益率が高く狙い目の商品と言われています。

 

④将来の発展のために十分かどうか

毎月の収入が、生活するだけでギリギリの金額だとしたら、将来的に作家を続けていくことは徐々に難しくなっていきます。

生活のための目先のことばかり追いかけてしまうと、よい新作を生み出すことも困難になり、作家としてブランドとして先細ってしまうからです。

上でもお伝えした通り、
「作品のクオリティを上げるために高価な機械を購入したい」
「新作をつくるために一ヶ月窯元に修行に出たい」
という願望を実現できるかどうかが、作家としての分かれ道になることもあるでしょう。

そのための蓄えが可能な価格設定であることも重要です。

本業ハンドメイド作家を目指すなら安売りしない!

ハンドメイド作家を趣味ではなく、ちゃんとしたお仕事にしていきたいのなら、はじめから安売りしてはいけません。

友達や知り合いに対して安売りしてしまいそうになるなら、作家をやっていることをはじめから誰にも教えないことです。
もしくは、途中からブランド名を変えてでも、知り合いからは遠ざけるべき。

なぜなら、『安いから買う』『友達だから買う』という枠の中にいると、作家として成長できないからです。

また作家自身の中に『安いから売れているんだな』という気持ちがあると、作家として長続きしません。

作家として成長し、長く生き残っていきたいのなら、『安いから売れてる』『安いから買う』のループからなるべく早く抜け出しましょう。

◎初心者作家さんにはお試し低価格ブランドがおすすめ。

もしあなたが駆け出しの作家さんで、作品にもまだ自信が持てないなら、一度お試しブランドを出してみるのはいかがでしょうか。

私自身、一番はじめに出したのは低価格帯のブランドでした。
自分の作品がどの程度売れるのか、どんな作品なら売れるのか、低価格でもいいのでまずは試してみたい、という気持ちで始めました。
まったく未経験から徐々に経験を積んで、作家としての自信にも繋がっていったので、初心者さんにはおすすめのやり方です。
本気のブランドをつくる前に、期間を決めて出してみるのも良いかもしれません。

 

価格設定は奥が深い

価格には色んな意味合いがあり、人間の心理を左右する、とても奥が深いものです。

価格の付け方の王道パターンとして、「松竹梅」があります。
価格の高いもの(松)、中程度のもの(竹)、比較的安価なもの(梅)、と作品価格を3段階に分けて設定すると、真ん中を選ぼうとする消費者心理が働いて、竹が一番買われやすいと言われます。

さらに、価格を見ただけで、
【高いもの=質が良い、安いもの=安かろう悪かろう】
というイメージを持つことはありませんか?

なんの根拠もないのに、『安すぎるのは心配だから、真ん中の値段のにしようかな』なんて、同じ商品でもわざわざ少し値段の高いものを選んだりするのです。

つまり、よかれと思って安くしているつもりでも、「それなりの商品だから安い」「安い=不安」と受けとめられている場合もあるのです。

価格そのものが作品イメージ(+ブランドイメージにも)に大きく影響しているわけですが、イメージだけでなく、お客様の質にも影響します。

実際に、私自身も今までに経験してきたことですが、低価格の作品をご購入いただくお客様はあまり熟考せず軽い気持ちでご購入される場合が多く、ブランドにも高い関心を持ちにくい、作品を適当に扱われやすい、などの傾向があります。

一方で、高額の作品をご購入されるお客様は、ブランドの価値を認め、高い関心を持っていただけるので、作品を大切にしていただけますし、大変感謝していただくことが多い傾向です。

(値上げの考え方についてはこちら、実践についてはこちらを参照)

そんなことも考慮した上で、価格設定を行いましょう。

 

ハンドメイドを仕事にするなら、考え方をガラッと変えてみよう

上でもお伝えしました通り、ここで書いたのは、あくまでも10年近くハンドメイド作家として活動してきた私なりに導き出した価格設定の一つの方法です。

作家さん一人ひとりの考え方、作品の作り方などによって、価格設定の方法は異なって当然だと考えています。

それから、ハンドメイド作家界隈で『原価×3』があまりにも浸透しているのは少し問題ではと感じます。

私自身も、作家を始めた頃から誰が決めたのかもわからない『原価×3』を基準にしてしばらくの間は迷走していましたが、本業作家を目指すうちに、だんだんと無理が出てきました。長い間、無理していたなと思います。

皆さんはそんなことがないよう、ぜひ一度『ハンドメイド作品の販売で得たい月収』−『一ヶ月で無理なく作れる作品数』と計算してみてください。 そしてその価格設定があなたにとって適正かどうか検討してみてください。

もししっくりいかなかったなら、自分なりの価格設定を考え直してみてください。

あるいは、「今の作品以外で作家になることなんて考えられない」というわけでなければ、希望の収入を可能にする「作品」から考え直してみるのも良いかもしれません。

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